「味がしない」は年齢のせい? 亜鉛・味覚障害・銅欠乏について
「最近、味が薄く感じる」
「何を食べても美味しくない」
「食欲が落ちた」
「口の中が苦い」
といった相談を受けることがあります。
年齢のせいかな、と考えてしまう方も多いのですが、実はその背景に亜鉛不足が隠れていることがあります。
今回は、味覚と亜鉛、そして意外と知られていない「銅欠乏」についての話です。
味覚は“健康状態”を映す鏡
私たちは普段、当たり前のように味を感じています。
しかし味を感じる「味蕾(みらい)」という組織は、実は非常に新陳代謝が活発です。
そのため、
- 栄養状態
- 加齢
- 炎症
- 薬剤
- 睡眠不足
- ストレス
など、全身状態の影響を受けやすい特徴があります。
特に重要なのが「亜鉛」です。
亜鉛は味覚に重要なミネラル
亜鉛は、
- 細胞の修復
- 粘膜の維持
- 免疫機能
- 味蕾の再生
に深く関わっています。
つまり亜鉛が不足すると、味を感じるセンサーの働きが低下してしまうのです。
実際、
- 味が分かりにくい
- 苦味だけ強く感じる
- 食欲が低下する
といった症状の背景に亜鉛不足が見つかることがあります。
「食欲低下」は全身の衰えにつながる
味を感じにくくなると、「食べる楽しみ」が減ってしまいます。
すると、
- 食事量低下
- 低栄養
- 体重減少
- 筋力低下
- フレイル
へつながることがあります。
特に高齢の方では、ここから体力低下が進んでしまうこともあります。
循環器内科でも、
心不全治療や動脈硬化管理、糖尿病治療などの管理において、栄養状態は非常に重要です。
亜鉛だけを飲み続けると「銅欠乏」が起こることがある
亜鉛補給は治療薬があります。
あるいはサプリという形で摂取されている方もいらっしゃいます。
亜鉛製剤を長期間にわたり漫然と内服すると、「銅欠乏」を起こすことがあります。
代表的な亜鉛製剤としては
ノベルジン があります。
後発品だと 酢酸亜鉛 という名前で処方されていたりします。
亜鉛を過剰に摂取すると、小腸で銅の吸収が抑制されてしまうのです。
銅欠乏で起こる症状
銅不足になると、
- 貧血
- 白血球減少
- 倦怠感
- 手足のしびれ
- 歩行障害
などが起こることがあります。
特に、
「鉄剤を飲んでも改善しない貧血」
の背景に銅欠乏が隠れていることがあります。
貧血だけなら銅の補給や亜鉛治療を中止で改善するのことが期待できますが、しびれなどはなかなか改善に時間がかかることもあり、注意が必要です。
サプリメントにも注意
最近は市販サプリで亜鉛を摂取されている方も増えています。
しかし、「体に良さそうだから」という理由で長期間・高容量を続けると、かえってバランスを崩すことがあります。
栄養は「多ければ多いほど良い」わけではなく、バランスが重要です。
心臓や血管の治療をするときに、あるいは今後の予防をするときに食事を美味しくいただき、健康を維持する、ということはとても重要です。
味覚を取り戻すために亜鉛を補給する、というは一つの選択肢です。
ただ、漫然と続けることで銅不足により貧血やしびれ、だるさ、というものが起こることも知っていただけると良いです。
当院では必要に応じて、
- 亜鉛
- 銅
- 貧血検査
- 栄養評価
なども行っています。
亜鉛の血液検査は午前中空腹時に採血が必要です。
また風邪や熱があるときには、亜鉛の値が見かけ上低く出ます。
なので、体調が安定しているときに血液検査を行うのが良いです。
「最近ご飯がおいしくない」という症状は、体からの大切なサインかもしれません。
気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
